昨今のものづくりに思う事
日本は資源がないので世界で戦っていくには技術やサービスを売り物にしていくしかない。
生産コスト低減のために中国へ人、技術を移管し始めた頃には今日の状況は予想できた。実際には予想より早く中国が大きくなってしまい、東南アジアへ移行、ここも状況は中国と同じであり、コスト面に加え、諸々のリスクを考慮すると、海外生産のメリットは相当薄くなってしまった。この期間に、日本国内には何も残らず、どこの国とも戦える能力のない国に成り下がってしまった。
日本製品の品質は昔の実直な日本人気質が支えていた。図面では公差±0.1でも、製造現場は誤差を極力小さくする努力を行い、実際の製品品質は高いレベルで維持されていたと思われる。壊れない、長持ちするといった、日本製品の評判はそれによって支えられていたといっても過言ではない。それがコスト高になる要因でもあるので、バランスは難しいが、今の製品の品質はやはり昔より落ちていると感じる事が多い。
品質とコスト、製品の目的、使われ方でそのバランスポイントは異なるので、すべてを手間暇かけてやることが正義ではない事も多くの人は理解していて、そういう面の代表格である100円ショップの存在価値は非常に大きい。今の日本で100円ショップで戦える製品を作れるならば、世界でも通用するであろう。
その一方で高度な技術を求められる航空宇宙、半導体製造、その他世界有数といわれる領域で世界で戦っていける企業、人材を育てるために、国がもっと戦略的に支援し、日本というブランド価値を高めていく必要がある。と、私は考える。世界有数の技術力は日本という国のセールスポイントになる。
私は製造業という領域で仕事をしてきたので、結果は「製品」という現物で評価されるが、最終的には使用するユーザーがどう感じるか、である。いくら性能が高い商品でも、それがユーザーのニーズに合わなければ結果的に売れない失敗作になる。そういう意味で、どんな製品を目指すのか、が重要になってくる。よく「売れる商品を作る」もしくは「作れ」と、メーカーの上層部は指示するかもしれない。企画段階で「それは売れるのか」と聞かれることもあるだろう。
「売れる」のは結果であって前提ではない。もちろん売れない商品を売る営業技術もあるだろうが、今のユーザーはよく見ている。「いい」と思ったものは受け入れられるし、逆の場合もしかり。今はその差が明確に分かれる時代である。作り手側の新しい提案は必要だが、独りよがりは大概の場合受け入れてもらえない。やはり製造業もサービス業であり、顧客ニーズの正確な把握と、それに合った「製品」というサービスを提供していかなくてはならない。よく言われる「お客様目線」に真剣に向き合い、それにかかわる人たちが同じ方向を向いて「製品」に育てていく事が結果的に「売れる」事につながっていくであろう。